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車内では、しばらく無言が続く。
俺が黙っていることで、香音は俺が怒っていると勘違いしたのか、
「…………ごめんね」
と、申し訳なさそうに零す。
「………なんの"ごめん"なわけ?」
「なんの、って……今日のこと全部。迷惑かけたし、嘘まで吐かせたし……」
全部一人で抱え込んで頼ってもらえなかったことに拗ねても、迷惑だと思ったことは一度もないし、嘘だって自ら望んで吐いたこと。
なによりも香音を自分の手で守れたんだから、それだけでいい。
ここへ来るまでの種明かしをしたあと、タクシーはゆっくり香音のアパートへ到着する。
財布を取り出そうとする香音の手を制すると、戸惑う瞳が俺を見た。
「いらない。つか、俺も降りるから」
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