2049人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアの前。
鍵を開け、玄関へと足を踏み入れる前にライトが2人の顔を照らす。
「ね、やっぱりタクシー代返すよ」
一歩踏み出しかけた足を戻して、こちらを振り向く香音に俺は首を振る。
「いいって言ってるだろ」
「でも、」
あまり引く気のない香音に苦笑いを浮かべ、俺は馬鹿みたいな駆け引きをする。
「……そんなに悪いと思うなら、嘘を本当にしてよ」
"フリなんかじゃなく、本当の彼女に"
「……なんてな」
俺の真意を香音が理解するまえに、
明らかな拒絶を目の当たりにするまえに、
俺は香音の髪を大きく乱して、誤魔化した。
最初のコメントを投稿しよう!