動揺

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ドアの前。 鍵を開け、玄関へと足を踏み入れる前にライトが2人の顔を照らす。 「ね、やっぱりタクシー代返すよ」 一歩踏み出しかけた足を戻して、こちらを振り向く香音に俺は首を振る。 「いいって言ってるだろ」 「でも、」 あまり引く気のない香音に苦笑いを浮かべ、俺は馬鹿みたいな駆け引きをする。 「……そんなに悪いと思うなら、嘘を本当にしてよ」 "フリなんかじゃなく、本当の彼女に" 「……なんてな」 俺の真意を香音が理解するまえに、 明らかな拒絶を目の当たりにするまえに、 俺は香音の髪を大きく乱して、誤魔化した。
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