2049人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほんっとバカ」
「いやっ、…そうじゃなくて!…だからその……ほら!新しい出会いをさっ…!」
慌てふためく和泉は、勢い余って目の前のグラスを倒し、少し残っていたビールがテーブルに小さな水溜りを作る。
「あ~、もうっ何やってんの~」
いち早くおしぼりを手にして、テーブルを拭き始めたのは、田村。
子供みたいにシュンとしながら和泉が「ご、ごめん…」と言うと、倒れたグラスを元に戻した。
何年経ってもこの話題に触れないよう、みんな気を遣ってくれている。
香音と別れたあとの俺を知っているからこそ、余計だ。
だけどそれも、いい加減終わりにしなきゃいけない。
「……あのさ、」
みんなの視線が、俺を見る。
「……俺、好きな人がいる」
最初のコメントを投稿しよう!