嫉妬

6/50
前へ
/747ページ
次へ
「ほんっとバカ」 「いやっ、…そうじゃなくて!…だからその……ほら!新しい出会いをさっ…!」 慌てふためく和泉は、勢い余って目の前のグラスを倒し、少し残っていたビールがテーブルに小さな水溜りを作る。 「あ~、もうっ何やってんの~」 いち早くおしぼりを手にして、テーブルを拭き始めたのは、田村。 子供みたいにシュンとしながら和泉が「ご、ごめん…」と言うと、倒れたグラスを元に戻した。 何年経ってもこの話題に触れないよう、みんな気を遣ってくれている。 香音と別れたあとの俺を知っているからこそ、余計だ。 だけどそれも、いい加減終わりにしなきゃいけない。 「……あのさ、」 みんなの視線が、俺を見る。 「……俺、好きな人がいる」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2049人が本棚に入れています
本棚に追加