嫉妬

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それぞれ顔を見合わせ、気まずい空気が漂う中、俺はわざと明るく言い放つ。 「それでも俺は諦められなかった!…好きなもんは好きだし、どんだけ傷付いてもとことん頑張るって決めたんだ」 そう断言した俺に、和泉は無言でツカツカと近づき、ドカッと隣に腰を下ろす。 そして、思いっきり背中を叩かれた。 「って!」 「よっしゃ!!頑張れ!!!」 和泉に視線を向ければ、ニッと笑顔を浮かべながらも、若干瞳が潤んでいるように見えた。 「……和泉」 「なっ、竜!」 「そうだな。……どうしようもなくなったら、俺らの胸かしてやるよ」 トン、と軽く胸を叩く松野に、思わず笑みが漏れる。 ………あの時と同じ台詞とか、ほんとなんなんだよ。 俺はあの日の、香音に一目惚れした日のことを思い出す。
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