嫉妬

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竜の手から解放された和泉は、少し息を切らしながら、俺の代わりに飯山に問いかける。 「心当たりっていうか……羽村の話を聞いてたら、その可能性もあったのかな…って」 バレンタインデーの日、体調が悪そうだったのも、俺を拒んだのもそのせいだとしたら。 「も、もしそうだったら、なんで羽村と別れようなんて思うんだよ?」 「それは……羽村に迷惑かけたくないからじゃないの…?」 あの時の俺は、責任を取れるほど大人じゃない。 無責任なことはしていないけれど、絶対とも言い切れない。 「これはあくまで私の想像だからさ……ほんとのとこは……香音ちゃんに訊かないとわかんないけど……」 少しも想像しなかった"理由"。 だけど、このあとあの人と再会し、初めて知る"真実"があるなんて、この時の俺はまだ知らない。
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