嫉妬

33/50
前へ
/747ページ
次へ
「……はい」 目の前のテーブルに、氷が多めに入った麦茶のグラスが置かれる。 たぶん無意識なんだろうけど、香音は本当によく俺の好みを覚えている。 「………」 「………」 言いたいことはあるのに、どのタイミングで切り出せばいいのかわからなくて、沈黙だけが続く。 香音もきっと同じなんだろう。 困ったような顔が、それを物語っている。 「……これなに?」 沈黙を破るように、テーブルの上の紙袋を指差す。 「え?…あ、チョコレートだって」 紙袋に手を伸ばし、中から長方形の箱を取り出す。 その表情は、何だかとても嬉しそうに思えた。 さっき見た場面が、頭を過ぎる。 焦りと嫉妬で、やばいくらいにイライラする。 「………なんだか嬉しそうだな」 こんなの、八つ当たり以外のなにものでもない。 「あ、これね中に……」 「先輩がくれたから?」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加