嫉妬

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香音の話を遮り、無表情のまま真っ直ぐに見つめる。 柔らかい笑顔を浮かべていた香音も何かを察したのか、徐々に笑顔が失われていった。 「そんなんじゃないよ」 「いーよ、嘘吐かなくて。何にも用意してなくて悪いな」 子供みたいに拗ねて、口を開けばペラペラと、こんな嫌味しか言えないなんて。 「なにその言い方。壱吾、今日変だよ?」 眉を寄せ、怪訝な顔を見せる香音に溜息を零すと、 「………そうだな。じゃ、帰るわ」 今の俺は、一緒にいればいるほど、香音に嫌な思いしかさせられない。 カバンを掴み、玄関に向かおうとする俺を、香音が引き止める。 「え、ちょっと待ってよ、意味わかんない。っ、なんでそんなに怒ってんの!?」
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