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それを目の当たりにした瞬間、俺の眉はわかりやすく潜み、小さな苛立ちをみせる。
香音も、突然腕を掴まれたものだから驚きを隠せず、先輩を見つめるしかないという、何とも俺にとって気分の悪い状況。
ひとり楽しそうなのは、にこやかに微笑んでいるだけの先輩で。
「腕、離して下さい」
明らかに機嫌が悪そうな俺の声に、先輩はふっと口の端をつり上げる。
「なんで羽村にそんなこと言われなきゃならないのかな?」
「………いいから、離して下さい」
全てわかっているくせに、俺の口から"なにか"を言わせたいのがみえみえだ。
ただならぬ雰囲気に周囲はザワめき、疑問を浮かべ始める。
「え、なに。もしかして羽村くんって……」
「え!?うそ!そういうこと!?」
単なる三角関係……誰もがそう思うところで、ただひとり、彼女だけは違った。
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