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懐かしい名前に、わかりやすく動揺を見せる香音。
「本当、偶然なんだけど……たまたま担当したのが津坂さんで。…その後、少しだけ話した」
………この場で口にするべき話でないことは、わかっていた。
必死に隠してきた香音の気持ちを考えれば、わかることだ。
だけど真実を知った俺は、もうなりふり構うことなんてできなかった。
「全部、聞いた。………あの時あったこと」
サッと逸らされた視線。
何かに堪えるように、ぎゅっと服を掴む手が微かに震えてることに気付いて、俺もやるせない気持ちになる。
「…………なんで、言わなかったんだよ」
"言わなかった"んじゃなくて、"言えなかった"。
……そんなことくらいわかる。
「そんな小さな身体で、全部一人で抱えてさ……」
どれだけ悩んで、苦しんで……あの答えに辿り着くしかなかったのか。
「………俺って、そんなに頼りなかった?」
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