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どうしてあの時の俺は、何も気付けなかったんだろうか。
今、思い返してみれば、おかしいってわかるはずなのに。
情けなくて、悔しくて。
そんな自分に一番腹が立つ。
「…………気付かなくて、当然だよ……」
今まで沈黙を続けていた香音が、重い口を開く。
「だって、…………気付かれないように必死で………隠したんだもん……」
その声は、今にも泣き出しそうに震えていて、俺の胸を小さくキュッと締め付けた。
「…………壱吾に、嫌われるのが怖くて………どうしても本当のことが………言えなかった」
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