真実

9/18
前へ
/747ページ
次へ
どうしてあの時の俺は、何も気付けなかったんだろうか。 今、思い返してみれば、おかしいってわかるはずなのに。 情けなくて、悔しくて。 そんな自分に一番腹が立つ。 「…………気付かなくて、当然だよ……」 今まで沈黙を続けていた香音が、重い口を開く。 「だって、…………気付かれないように必死で………隠したんだもん……」 その声は、今にも泣き出しそうに震えていて、俺の胸を小さくキュッと締め付けた。 「…………壱吾に、嫌われるのが怖くて………どうしても本当のことが………言えなかった」
/747ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2052人が本棚に入れています
本棚に追加