小さな嘘。

真実

少しずつ吐き出される香音の本音に耳を傾けながら、胸の中ではいろんな感情が渦巻いていて。
その中には、悲しい、苦しい、悔しいだけでなく、小さな怒りも含んでいる。

「………だから別れるしかなかった、って？」

深い溜息を吐き、俯く香音の頬に触れると、俺と視線を合わせるように上を向かせる。
やっと向き合えた瞳には、必死に堪えている涙の膜が張ってある。

「っんとに、バカだろ」

低く吐き出された声色に、香音の表情が強張る。
全てを知った俺が、簡単に離れていくと思われていたことが腹立たしくて仕方ない。

「俺が、香音を嫌いになるわけねーだろ」

その言葉に、堪えきれずに零れた涙が、香音の頬を伝った。
あの頃、俺は精一杯の愛を香音に伝えていたつもりだった。
けれど、何があっても大丈夫だと信じられるくらいの安心をあげられるほど、大人でもなかった。

でも、今なら俺の全てで受け止めてやれる。
この手を離すなんてことは、絶対にない。
だから………。