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最後、小さく聞こえた『触れられない辛さ』って…なんだ?
その言葉の意味を俺が理解するまでに、香音は「ごめん」とひと言残して、部屋を飛び出した。
「ちょ、香音?!」
藤野さんが後を追いかけようと部屋の外に出たけれど、香音の姿はなかったようで、困ったようにこちらを見る。
「……ちょっと待って…頭がついていかない」
「羽村くんの元カノが、北見さんってこと??」
ザワザワと周りがざわめく中、俺は深く息を吐き出し、項垂れるようにソファに腰を下ろすと、瞼を閉じた。
「嵩翔、………お前全部知ってたんだろ?」
主任が先輩に問いかける声に反応はなく、代わりに俺の頭上で声が降る。
「追いかけないんだ?」
ゆっくりと顔を上げれば、無表情のまま俺を見下ろす先輩と目が合った。
「あれだけ俺に『本気じゃないなら手出すな』とか言っておいて、羽村はなんなの?お前の本気ってなに?」
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