真実

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先輩は、掴んでいた胸ぐらを少し乱暴に離すと、「…ハァ」と息を吐き、髪をぐしゃっと掻きあげる。 今にも喧嘩が始まるんじゃないか…といったような空気感に、周りも息を潜め、どうしたらいいかわからず立ち尽くしていた。 「…でも、タクシーの中で…キス、してたじゃないですか」 静まり返る部屋に、情けない俺の声が響く。 香音は俺しか無理だって言われたって、俺はあの日見た光景が忘れられない。 「タクシー?……あぁ、あれしてないよ。しようとして思いっきり拒否られた。……つか、見てたの?悪趣味だな」 ハッ…と乾いた笑いを零すと、目の前のソファにドサっと腰を下ろす。 「…香音ちゃんは、最初から羽村しか見てないよ。俺と会ってたのだって、羽村との過去をみんなにバラされたくなかったら…って脅したから。結構強引に攻めてみたけど、全く相手にされなかった。……でも、羽村は違うだろ?」
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