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俺を見上げる先輩の表情を見る限り、大体のことは知っているんだろう。
受け入れてもらえただなんて思っていたわけじゃないけど、少しだけ距離が近づいたと感じたのは、俺の勘違いじゃないと思ってもいいんだろうか。
「ずっと羽村が好きなんだよ。別れたくて別れたわけじゃないって、全てを知った今なら、羽村もわかるだろう?」
グッと込み上げるなにかを耐えるため、ギュッと手に力を込める。
香音に別れを切り出されたあの日、
『大嫌い』と言われたあの瞬間から、ようやく前に進み出せる気がした。
「…おれ…っ、香音を追いかけてきます…!」
香音がこの部屋を出て行ってから、ずいぶん時間が経ってしまっている。
だけど、じっとしているなんて無理だった。
慌ただしくコートとかばんを掴み、部屋を出る前に主任へと頭を下げる。
「すみませんっ!せっかくの結婚パーティーを台無しにしてしまって…」
「本当だよ。責任とって、絶対北見さんと幸せになるんだぞ?」
主任は俺の肩をバシっと叩くと、「ほら、早くいけ!」と部屋のドアへと急かした。
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