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俺と横並びに立つ彼女は、ただ前だけを向きながら俺に問う。
「初めて会った時に、香音が失くしたピアスの話をしたこと」
俺が「…はい」と返事をすると、彼女はやっとこちらを向き、ふっと微笑んだ。
「あの時も言いましたけど…香音、本当にショックを受けていたんですよ。とっても大事なもので、ずっと大切にしてたのに…って。やっぱりあのピアス、羽村さんからのプレゼントでしょう?」
「……いや、あれは俺からじゃなくて……香音から貰ったもので…。その…お互いの誕生石が入ったお揃い…なんです」
「……そっか……そういうことだったんですね」
ポンー…と一階に到着した合図と共に、再び開くドア。
開閉ボタンを押し、相田さんの方を見ると、彼女に降りる気配はない。
「…相田さん?」
「私、羽村さんのこと好きです」
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