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深とした闇の中で、グレイは苛立ちを露にしたまま小さく舌を打った。
夜霧が煙り黒い空を灰色に濁らせる──
上空からいくら眺めても、暗い森は全てを闇で覆い隠す。
グレイの周りにまとわりつく三羽の妖魔たち。
顔から胸までが人間の女で下半身は鳥の姿をしている。
それらはグレイの視界を邪魔でもするように飛び交い、そしてたぶらかしの言葉を投げ掛けるのだった。
“──ねえ、どこにいくの?”
“もう、どこにも居ないわよ──”
“ねえ、一緒に遊びましょ”
「うるさいっ!散れっ」
グレイは漆黒のマントを翻すと同時に、惑わしの歌を奏でながらまとわりつくそれらを苛立たし気に追い払った。
払われたその場から円を描きながら散り散りになり妖魔達は高い笑い声を漏らした。
耳につく甲高い声に集中力が途切れる。
ルナの居場所は未だにわからない。
飢えた下等な魔物に見つかってしまえば、ルナはただの美味い餌でしかない。
たちまちに無惨な姿へと変えられてしまうだろう。
絶大な力を持つバンパイヤ
グレイだからこそ、ルナの清き乙女の血の力は価値あるものに変えられる。
ルナの血も肉も──
すべて俺のものだ──
「…ルナっ……」
グレイはその名を口にすると急降下して森の中へ姿を消した。
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