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不意打ちの強烈な痛みに獣はのた打ち回る。それを背に、グレイは顔色を変えてその干からびた餌の前に膝を下ろした。
「違ったか…」
せっぱつまった表情に安堵の色が浮かぶ。目の前の少女の屍の髪を手に掬い、手触りを確かめながらホッと息を吐くとグレイは屈めた腰を上げた。
後方からは、低い唸り声がグレイを威嚇する。でかい図体を震い、体勢を立て直した獣がグレイに向かい牙を剥いていた。
「ふん…たかが犬の分際がこの俺に牙を剥くか?二つもある頭の中には一つ分の脳みそも入っていないらしいな……」
口角が上がり鼻からは呆れたような笑いが漏れる。
唸り声を上げ続ける犬にグレイは背を向けたままそう皮肉っていた。
食い千切られた少女の腕がグレイの足元に無造作に転がっている。
ルナと似た髪型に体型、そのややこしい見た目に苛立ちを交え、グレイはそれを尖った靴の先でぐっと踏みつけた。
グレイの靴先が触れた少女の腕からは蒼い硝煙が立ち上がる。
枯れ木のようにパシッと音を立てると、それは無惨に砕けて灰に変わる。グレイはそれを見届けるとゆっくりと背後を振り返った。
グレイは口端に余裕の笑みを浮かべる──
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