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「本番前なのにすいませんでした」
塩崎がカメラを持ったまま頭を下げた。
「いえ、構いませんよ。それより塩崎さん、そのテレビカメラ重くないんですか」
インタビュー中に何度か塩崎の方を見たが、同じ姿勢で一切表情に変化がなかった。
「これ、重いですよ。けどもう慣れました」
「すごいですね」
磯部は自分の両腕の筋肉を確認した。もし自分があのテレビカメラを持った場合、ものの五分ももたないだろう。
「あれ、磯部さん、なんで手袋されてるんですか?」
槙野が磯部の手のあたりを凝視した。
「ああ、これですか。僕は多汗症でして、手にすごい汗をかくんですよ。特にゲームやってる時に汗が出ると、もう気持ち悪くて……。なので一日の大半はつけてますよ」
手袋をはずすのは風呂とトイレの時くらいだった。今日の大会も手袋をつけたままゲームをプレイする予定である。
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