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田中の控え室を出て、槙野と塩崎は廊下を右に進んだ。突き当たりを左に曲がり、先程より幅が狭くなった廊下をさらにまっすぐ進む。曲がり角を左に曲がってすぐ、非常口前に警備員が立っているのが視界に入った。その警備員よりも奥で、控え室に入ろうとしている田中の姿を見つけた。走って近づき、槙野は彼を呼び止めた。
「すいません、田中さん」
「はい?」田中がこちらを向いた。「ああ、あなた達ですか。前回も言いましたけど
インタビューを受けるつもりはありません」
「そこをなんとか、二、三言だけでもお願いできませんか」
「本番まで時間があまりないので」
それ以上どんな言葉も受けつけないという様子で、田中は控え室に入っていった。
「ほんと受ける気ないみたいね」
槙野はため息をついた。
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