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「向かい側に対戦相手の磯部(いそべ)さんが座るわけですね。そう言えば磯部さんはもうここに来てるんですか?」
「いえ、まだみたいです」
「すごい腕前だろうな」
田中は目の前の椅子に座った。ゲーム機のコントローラーを手に取り、十字キーとボタンの押し具合を確認した。やはり家でいつも使っているコントローラーとは微妙に感触が違う。そのせいで大会中にミスをする可能性もある。少しプレイしていた方がいいかもしれない。
「すいません、ちょっと練習してもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」女性スタッフが頷いた。「あ、磯部さんが今到着されたようなのでご案内してきます」
「案内ありがとうございました」
田中は頭を下げた。
「失礼します」
女性スタッフはお辞儀をした後、ステージの反対側へ歩いていった。
「さてと……」
腕時計で時刻を確認すると、午後十二時五分だった。大会は午後一時からスタートする予定になっている。
まだ時間はある。一プレイくらいは出来るだろう。
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