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アニマ
「ちょっとまて、セラちゃん。(お前がドラゴンを倒す?)ハハハ、面白い冗談を言うね。おとうさん違う意味で嬉しいぞ。」
「違うよ、おとうさん。冗談じゃなく本当に冒険に出て倒すのだよ。このダルフさんみたいに」
「いやいや、ちょっと待て、女のお前がそんなの無理だろ。第一に武器も持ってない。それに持っていたとしても扱えないだろ。」
「武器なんてダルフさんも持ってないよ。」
「ダルフさんは経験や武術流派を習得しているのだよ。」
基本的にこの世界では、素手を使って戦う拳法や柔術、刀や槍や弓を使った刀流に槍術に弓術などもある。戦い方や人により編み出される流派が数多く存在していた。
「そうだよ。ジットの言う通りだ。辞めなさい。」
別に武術や流派に頼らなくても、アニマがある。
「!!!」
「昨日、ダルフさんがラームを倒したあの炎を出した技、あれアニマでしょ。私知っているんだから。」
「アニマ・・・セラ、お前知っていたのか。これこそが武術や流派やましてや武器に頼らなくてもいい手段があることを。」
とオヤジはボソリと告げた。
「うん、前旅の人と話すときや昔の仲間の人やギルド関係の仲間の人と話している時に、何回か聞いている時にわかってきた。
そして昨日ダルフさんのあの技を見て確信が持てた。」
「そうか」とオヤジは言った
「・・・」
俺は何も話せなかった。俺の知らないことをセラが知っていて、驚いて話せなかった。そこにセラには更に追い討ちをかけるように、ダルフに質問をした。
「ねぇねぇダルフさん、私にもアニマを教えて」
「あーずるい、俺にも教えてよ」と俺が言うと。
「なによ、ジット。あなたには、パパがいるじゃない」
とセラが言うと亭主が、「そうだ俺の修行は嫌なのか。それよりセラちゃんパパよりどうしてダルフさんを選ぶのよ。」といつも男気が溢れている亭主が今回だけは情けなくしょぼくれたように言っていた。
「いやオヤジ、別に嫌って訳はないんだ、セラが教えて貰うなら俺もって思っただけだよ。それを言うならお前こそおやっさんに教えてもらえよ。」
「そうだよ。パパならジットに教えている修行よりも、特別にコツとか、いろいろと分かりやすく教えてあげるから。それにダルフさんは旅人だよ。いつもまでもここに滞在している訳にはいかないでしょ。」
と亭主がさらに情けなくなってきた。とそこにダルフが応えるように、話した。
「なら、修行を付けてもらえるのですか」とセラやジットは、笑顔で言った。
「おいおいそんなことダメだろ。」と亭主が口を挟む。
けどダルフは、「まぁいいですよ。特にすることないですし、先ほど言ったように軍隊さんがいる間はいてくれってことになっているので。」と言う。
「やった」とセラやジットが大声で喜ぶ。
「もぉうるさい、今何時だと思っているの。いくらダルフさんが戻ってきて話が聞けるから店が終わったらパーとするからってもう深夜よ、明日にしなさい。」
と亭主の奥さんでセラのお母さんが言ってきたのだ。
「はい、じゃあダルフさん明日お願いね」とセラが言い。
「わかりました。じゃあまた明日、おやすみ」と言ってジットは、店を後にした。
「じゃあダルフさんも、これ部屋の鍵ね。宿屋は左隣の棟だけど、私たちの住まいは奥の離れにあるの、その1階の玄関の直ぐにある部屋ね。普段は物置として使っているけど、話を聞いて寝泊りできるように整理しておいたで。家賃は修行をみる講習費でいいかしら。」
と亭主の奥さんは言った。
「いえいえ。むしろありがとうございます。宿泊費まで考えてくださって、自分のこれからのこの村にいる滞在期間をどう過ごすか悩んでいて、この宿屋に来てよかった。」
とダルフが言った。
「おいおい、ちょっと待て、我が家にダルフを泊めるつもりかい。わざわざ空き部屋があるのに。なんでうちに泊める。それにセラだっているのに」
と亭主が言った。
「別に、私たちの寝室は2階じゃないそれにわざわざ宿部屋に泊めるなら、維持費の足りない分はあなたの小遣いから引きますよ。」
と奥さんが亭主に訴えた。
「え、あ、あ、わかった」と唖然として返事をした亭主。
「じゃあよろしくお願いね」と奥さん。
「あ、はい。わかりました。では部屋へ行きます。今日はこれで、当分お世話にします」とダルフは返事をする。
「はい、おやすみなさい」
次の日の朝、オニッシュ村、外の草原。
「おはよう、さてお二人の修行を始めようか」
「はい、お願いします」とセラは生き生き。
「お願いします」ジットはひねくれながら言った。なぜならセラと同じ屋根の下で寝ていたことに、しょぼくれている。
「じゃあまず、アニマについて説明するね。」
「アニマ。それは生きる者。全てが体の中に宿している潜在的な力のこと言う。別の名前では魔法や念とも言うが、基本は魂のことさ。」
「とまぁ、説明はこれだけだ。説明しても何も始まらないし根源を考えても・・・今の君たちにはまだ先の話、アニマを使えて更に極めてから考えればいいさ。」
「まずアニマを自然に出す為に基本的なことをやるぞ。」
「目をつぶって、立っている。」
「え」二人が驚く
「それってどういうことですか」と質問する。
「簡単だ、ただ目をつぶって、その場でふらつかず立っているだけ、ふらついたり倒れたりズレたらおしまい。じゃあ始めるぞ、3,2,1、はじめ」とダルフが急かす。
「え、うーん」と目をつぶりただ立っているだけの修行が始まった。目つぶり初めて直ぐなのに、こんなに疲れるのだ。なぜもうふらつく、頑張って耐えようとしたが、俺は前から倒れていった。
ドシャン!
「ジットもバテたのね」
そうか、セラはもうとっくにバテているよな、
そうだとも俺より先にバテてなくてはおかしい。
・・・ん、そう言えばセラのバテた時の声が聞こえなかったな、気絶したのかでもさっき声がしたし、なんでだ。
「よし、ひと休憩も終わったことだし、もう一度やってみるか」
「ええ、ちょっと休ませておくれ」
「そうね、ジットはさっき終わったし、休んでいて。私一人でやる。」
セラが疲れた顔をしながら、楽しそうに目をつぶり始めた。
「いや、セラがやるなら。俺も続きをやる。」とジットが威勢を張って這い上がって膝に手をつけて立ち上がろうとした、その瞬間に全身の力が抜けて、倒れ落ちた。
「あれ、なぜ」
ジットが不思議そうにしていた。
「じゃあ、ジットはそのまま休みながら見てなさい」
とダルフが言ったので、ふたりの様子を観察してみた。するとダルフがセラに手をかざした。そしたらセラの体がラームを倒した時のダルフさんみたいに、うっすらとだが少し光りだした。とその瞬間にセラ膝から倒れ落ちた。
「あぁだるい、疲れる、もうちょっといけるのだけどな」
と悔しそうに言うと、そこにダルフがつぶやいた。
「いや、頑張ったよ、アニマの着火が早くなった」
「アニマの着火」とジットが疑問に訪ねた。
「そう、アニマの着火。これがこの修行の目的。アニマを自然に着火すること、いわゆるアニマ自らの意思で使えるようにすることなんだ」
「それで、ダルフさんはセラに手をかざして何をやっていたのですか。」
と新たに聞き返す。
「あぁ、これはアニマを目覚めされるに為にアニマを使って火をつけているのだよ。そもそも説明したようにアニマは魂みたいに体にある潜在的な力の事なんだ、本来は自然に目覚める力なんだよ、力に目覚める人は、軍やギルドなどの人たちが訓練や試練から目覚めて使えるのだよ。それを修行で目覚める為には、アニマをかざして自然にアニマを目覚めさせる。それがいい方法なのさ。
火がくすめば、その後は亭主さんが一人前になるまでまた修行ができる、少しキツくなるが大きい力になるよ」
「そうなんだ、じゃあもっと修行を続けなければ」
「いや、もうジットはある程度、アニマが目覚め始めている」
「それにジットはさっき1時間もやっていたのだよ」
「え、1時間も。始まってすぐに倒れた記憶しかないんだけど」
「それがこの修行の大きな特徴なんだ、アニマを目覚めさせることは、魂に話しかけることなんだ、だから受けている側は、深層心理に入ってすごい集中している状態と変わらないんだ。だから人の声も聞こえない、時間が早く感じるんだ。」
「でもまぁ、目覚めかけている力と一緒やっていたら、まだ目覚めの兆しが来ないセラのアニマが芽を出すかも知れない」
「そうなの、ならジットすぐに立ちなさい、私のアニマのために頑張るのよ」
「えぇ、なんだそりゃあ。でもセラの力が目覚めるならいいし、それに俺の力が形になるなら」といい二人はまた立ち上がり目をつぶって修行を再開した。
ジットは今度は深く潜れてるみたいで安定し始めている、亭主さんいや「天樹」の修行のおかげだな、基礎ができている。それにセラの方もジットの力を借りているのもあるけど娘ってこともあって、目覚めがいい。これなら一人前になる頃は大きな力になっているだろ。修行をやり直して2時間が経った頃に二人は休んだ。
「やぁお疲れ、今回はお互い結構長く経っていられたね。
その分アニマの器ができたよ」
「え、私も」
「そうだよ、セラもジットと同じようにアニマの形が成ったのだよ。
ジットが力を貸してくれたのだろ」
「じゃあ、アニマをもう使えるの」
「いやそれはまだだね、それとこれとはまた別の話だし別の修行だね」
「なら早く次の修行をやろうよ」
「いや今日は、ここまで」
「ええ、なんでなんだ。早く次の修行をやろうよ。まだ私たちやれるし、日もまだ明るいし。」
「いやだめだ、今日はアニマを人為的に目覚めるのを早めた、さっきも言ったようにアニマは何かしらのきっかけと同時に目覚めるものなんだ。だから体がまだ消耗に気づいていないのだよ。今日はここまで、それに今日でアニマが形としてなるとは思っていないのだ、だから消耗による疲労感はハンパない最悪下手に修行を続けてアニマや体が動かなくなったら元もこうもない」
「そうなんだ、ならわかった今日はここまでにするよ」
と二人はわかってくれたように、村に帰り始めた。
村の門に着くと、いきなり村の中心の鐘楼の鐘が鳴りだした。
ゴーン、ゴーン、ゴーン、といつもとは違う鐘の音がなっていた。
「なんだ、いきなりどうしたんだ。」
「ちょっとこの鐘の音って、敵襲」
「敵襲って一体、何なんだよ。軍、モンスター」
状況を知るために門兵に聞いた。
「まだ正確に規模はわからないけど、どうやら、最近の討伐目標のオーガオールの関係のオーガやウルフェンの群れがこっち向かってきているみたいだ」
「だが、モンスターには分が悪い。こっちには中央の方から来た地方軍の人たちがちょうど訪問してきているからな。モンスターの群れも直ぐに片付くさ」
と村の人たちが自慢げに語る。
「なら安心か」
とそこに更なる、鐘の音が鳴り響いた。
ゴーン、
ゴーン、
ゴーン、
と草原の方からオーガやウルフェンの群れがやってきた。
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