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ここは、とある町の商店街…
大寒波が吹く季節の中、多くの人が道を行き交っており大変活気に溢れている。そんな中一人の少年がゲーム屋さんの窓ガラスの先に写るある商品を物欲しそうにじっと見ていた。
彼の名前は夢川ゆめかわ優希ゆうき。14歳の中学三年生で今は2月。つまり受験シーズンなのだが何故、今頃県立に向けて必死に勉強してはいけないような時にこんなところでのんびりと外を歩いているのかというともう高校を決めたためである。決めた場所は、私立の学園高等学校で二つのコースがあるのだが、一番下のコースだ。
「VRゲームか...俺もやってみたいけどその機器が高いんだよな...どうしようかな。まあ、私立は金かかるし携帯買ってもらえるんだから贅沢言ってらんないけど」
「ん? またお前か。どんだけ欲しいんだVRゲーム」
すると、店内から見知った店員のおじさんが出てきた。俺がよくここに来ているため話しかけてきたのだろう。
「別に良いでしょ。見てたって」
するとおじさんは呆れたような視線を向けてきた。
「お前がそこにつったっているせいで、道行く人の邪魔になっているだろ? 店の中に入っていいからそこからどけ」
「え、だけど別に何にも買わないのに入っていいの?」
「何を勘違いしているんだ? 別に見に来ているだけって人もたまにいる。何の問題もない。まあ、買ってくれればこちらとしては儲かるんでありがたいが」
俺はそうだと勘違いしていたために店の外から見ていたが、店の中に入れるんならむしろ入りたいぐらいだった。それに外寒いし。
中に入ってみると暖房が効いているようで外の寒さがまるで嘘だったかのように暖かい空気が体全体にかかり、快適な温度に…とはならなかった。
「ジャンバー脱ごう。これ着たままだと逆に暑いな」
「そうか、まあゆっくり見て行ってくれ。その代り、ゲーム製品はうちで買ってくれよ。そうだ、お前その中学のジャージ、ひょっとして学校帰りか?」
「え? いいえ。家にちゃんといったん帰ってます」
「そうなのか? いやー、今日はそんなに下校時間早かったのか?」
「違います。受験生ですから他の学年は部活が有りますけど引退したので」
「なるほど、そういうことか」
そう言いながらおじさんは少しの間わはははと笑いながら店の奥へと消えていった。
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