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桜の樹の下にはね
「人が埋まってるんだって、その人だったものの血を吸って、ピンクの花をつけるらしいよ」
「そうなんだ、なんで人なのかな?」
「何でだろう? わかんないけど、人は桜を眺めて綺麗だって幸せそうに笑うから、その幸せを記憶に留めるためにじゃない?」
「ふぅん、でもいいね、桜って」
「そうだね、綺麗だもんね」
「違うよ」
「え? 」
「人の夢をずっと吸い続けられるって事でしょ? 良い夢をずっとみていてくれる人の夢を吸えるなんて、羨ましいよ」
「うぅーん、そう言う意味じゃないと思うけど」
「そうかな? だって今みたいに、口も手も服も汚さずに人間を吸い続けられるなんて、羨ましいよ」
「そう思うのは、あなただけだよ」
見上げるほどに大きな桜は、少し赤みを帯びた花弁を風に乗せて散らせていく。
彼女の足元に転がる人だったものを、欲しがるように、羨ましがるように。
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