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当たり前だけどそう感謝を述べても何のことやら分かるわけもない二人は、私へ首を傾げてみせる。
「私の靴を盗った犯人、退治してくれたのでしょう?」
あぁと手を合わせた二人は、ブンブン顔を振り、笑って来た。
「違う違う、桜の樹がこの子食べるって言ってたから、そんなに美味しいのなら私がまず食べてみようかって、だから食べただけ、ただの偶然、たまたま、ノリ? だよ」
おかしなことを言っているはずなのに、その言葉が私には優しさに感じた。
「あなたも食べてみる?」
相方? の真っ赤な口元を拭いてあげていたクラスメイトは、そう言って、桜の木の根元を指差してくれた。
風に乗って舞わせる花弁たちが、一生懸命根元のそれへ落ちて行く。
次から次へと、まるでピンクの布をかけて、それを隠すように。
だけどたまたま、偶然は続くもので。
ここへ来る前にお洒落にクレープなんて食べてしまったから、お腹はいっぱいだった。
丁寧にお礼を言って帰路へつき直した。
あぁあ、見てしまった。
私の大好きな桜の樹が
独り占めできないようになってたのを。
残念だなぁ、残念だなぁ。
折角頼んで、沢山の血を持って来たから
木の下でお花見したかったのに。
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