一六八時間の決裂

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本当は悩んだ。 アイザックが居ないうちに消えようと思って、早一週間。 結局、奴と会うことも家を出て行くことも出来なかった。 いくら時が過ぎようと、時間は何も解決してくれないし、嫌な記憶も消してはくれない。 それを俺はいま身を以て体験している。 嫌な記憶は脳に刻まれているのでは無い、身体に刻まれているのだ。 風呂に入っている時も思い出して、ただのお湯が錘(おもり)のように重たくなる。 こうやって人は不可抗力で溺れていくのだろうか。 水にも溺れ、感情にも溺れ……、ああ、やっぱり、ここを出て行こう。 そう思ったのは昼を過ぎてから何時間後のことだったのか。 神は本当に意地悪な存在だ。 いや、そもそも存在しているのだろうか。 いいや、神なんて居ない。
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