一六八時間の決裂

5/11
前へ
/269ページ
次へ
『何度、来れば気がすむんだ!もう関係無いだろう!帰ってくれ!』 アイザックの言葉を思い出したのだ。 普段、怒りをあらわすことのないアイザックが、本気で怒鳴り散らしていた。 今、目の前に居る、この人間は俺が知らないだけで何度もここに来ている。 もう関係無い? 一体、何が? 「あんたに話せることは何も無い」 これは、いつでも思い続けていたことだ。 詮索してはいけない。 聞いてはいけない。 逃げなければならない。 扉を開け、玄関に逃げ込んだが、扉が閉まらない。 男が扉の隙間に左足を突っ込んで来たのだ。 「どうして、あなたはここに居るんですか?」 「あんたには関係ないだろう!帰ってくれ!」 隙間から覗く男の顔は、まだ笑っている。 奴に開けられないように、俺は必死に扉を押さえた。 「ここの家主と親しいんですか?」 「うるさい!帰れ!」 男の足を自分の足で押し出そうと試みる。 そんな時だった。 「アイザックさんが連続ストーカー犯だということを知っていますか?」 驚くべき言葉が男の口から転がり出た。 アイザックが、ストーカー……? 俺は耳を疑った。 もう男の顔は笑っていない。 怖い。 「たくさんの被害が出てるんですよ、知ってますか?」 「……っ、知らない!」 やっとのことで、男の身体を後ろに押し、扉を閉めた。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

462人が本棚に入れています
本棚に追加