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もう何をどうしたら良いのか分からない。
すべてを見なかったことにして、ここを出るか、それとも、アイザックを問い詰め……
「ニャン太……?」
声を掛けられ、どきりとした。
いつ帰ってきたのか、扉の前にアイザックが立っていたのだ。
その表情は、何もないと表現できる。
感情が見えない。
あんたがすべて悪いのだ、俺を信じてしまったから。
人間には疑いを。
信用するな、人間は全て敵だ。
あんたも、俺も敵同士。
人を信用するな、疑ってかかれ。
自分を守るために自分を偽れ。
心の中では人を疑え。
その代償は、孤独と黒。
あんたも俺も真っ黒だ。
「さよならだ、アイザックさん」
奴の横をスッと通り過ぎながらボソリと呟いた。
俺の後を追う足音が聞こえる。
早足で、いや、走る様に俺は階段を下り、玄関まで急いだ。
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