一六八時間の決裂

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「待てよ、ニャン太!」 止められることは分かっていた。 腕を掴まれることも分かっていた。 アイザックに言いたいことは沢山ある。 「まさか、あんたがそんな人間だとは思わなかったよ」 振り向けど、奴と視線を合わせることなく失笑を浮かべる。 呆れたように言うしか出来ない。 言いたいことは沢山あるのに、上手く言葉を紡げない。 「違う!ニャン太、誤解だ」 「何が違うんだよ!……っ!」 勢い良くアイザックの腕を振り解いたと同時に凄まじい音がした。 腕を振り解いた拍子に右側の棚に飾ってあったジェルキャンドルを二つとも下に落としてしまったのだ。 ガラスで出来た容器は見事に粉砕し、中身も散らばった。 これで、あんたとの思い出も無くなった。 あんたが、どんな顔をしていようと、これで終わりなんだ。 さよなら、アイザックさん。 「ニャン太……!」 俺はアイザックの家を飛び出した。
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