一六八時間の決裂

11/11
前へ
/269ページ
次へ
◆ ◆ ◆ 走って、走って、走って、がむしゃらに走って、どこをどうやって通ってきたのか、いつの間にか、俺は自分の本当の部屋に戻って来ていた。 自分の部屋の筈なのに、匂いがした。 自分の部屋の匂いを初めて感じた。 おかしいだろう? 本来ならば、住んでいる人間は自分の部屋の匂いに気付けないんだよ。 こんなにも、俺はあの家に慣れてしまっていたのだ。 天井からぶら下がった縄は、ずっと変わらずに俺の帰りを待っていた。 当たり前のことだが、ピクリともせず、ぶら下がっているだけ。 ただ、それさえも俺を嘲笑っているのではないかと思ってしまう。 だが、俺はその縄を天井から取り去った。 部屋に隠されているであろうカメラは、わざとそのままにした。 騙されていたと分かっても、あんたに負けたくない気持ちが消えない。 ────見たければ、見ればいい。俺はひとりでも浮上してみせる。見ていろ、クソアイザック。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

462人が本棚に入れています
本棚に追加