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走って、走って、走って、がむしゃらに走って、どこをどうやって通ってきたのか、いつの間にか、俺は自分の本当の部屋に戻って来ていた。
自分の部屋の筈なのに、匂いがした。
自分の部屋の匂いを初めて感じた。
おかしいだろう?
本来ならば、住んでいる人間は自分の部屋の匂いに気付けないんだよ。
こんなにも、俺はあの家に慣れてしまっていたのだ。
天井からぶら下がった縄は、ずっと変わらずに俺の帰りを待っていた。
当たり前のことだが、ピクリともせず、ぶら下がっているだけ。
ただ、それさえも俺を嘲笑っているのではないかと思ってしまう。
だが、俺はその縄を天井から取り去った。
部屋に隠されているであろうカメラは、わざとそのままにした。
騙されていたと分かっても、あんたに負けたくない気持ちが消えない。
────見たければ、見ればいい。俺はひとりでも浮上してみせる。見ていろ、クソアイザック。
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