八七六〇時間の忘却

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アイザックを忘れようと思ってから、ちょうど一ヶ月が経った。 日数にして三十一日、時間にして七百四十四時間……。 それを短いと感じるか、長いと感じるか、どう感じたか、そんなことなど忘れてしまった。 そもそも、俺はアイザックを忘れようとは思っていない。 もう気にならなくなってしまったが、部屋のカメラも、あの日のままになっている。 アイザックは、今でも、あの部屋のモニターの前に立ち、俺の部屋を見ているのだろうか。 それとも、もう俺のことは忘れたか。 忘れたのは、あんたの方じゃないのか? 俺が鈍感なだけか、部屋を盗撮されている以外、ストーカー被害らしいものを受けた記憶が無い。 後をつけられた記憶も無いし、写真や手紙を送りつけられた記憶も無い。 それは"今"も"昔"も変わらない。 あの人間は、一体、何がしたかったのか。
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