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◆ ◆ ◆
仕事へ向かおうと何気なく道を歩いていて、俺は急にハッとした。
同じ場所に住んでいれば、いつかは遭遇するかもしれないと思ってはいたが、まさか、こんなにも早く顔を合わせることになるとは。
アイザックだ。
目の前から、奴が歩いてくる。
平日の午前九時、一体、こんなところで何をしているのか。
互いの距離は二メートル。
気が付いているのは俺だけだろうか?
こんなに近いのに、奴は真顔で……そのまま俺の横を通り過ぎて行った。
「おい!」
奴の背中に声を掛けたが、振り返らない。
まるで、自分は関係ないと言っているかのように。
まさか、俺を忘れたんじゃないよな?
「アイザックさん!」
知らないフリをするべきだったのかもしれない。
そうすれば、何も失わずに済んだのかもしれない。
「君は、誰だ?」
ゆっくりとこちらを振り返ったアイザックが、不思議そうな顔をして言ったのだ、はっきりと。
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