八七六〇時間の忘却

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一ヶ月前、それは俺がアイザックと決別した日。 俺が出て行った後、きっと奴は俺を必死に探したのだ。 こんなこと、簡単に予想出来るではないか。 アイザックは俺を追って、交通事故に遭ったのだ。 「……俺の所為……」 「え?何か言ったか?」 ボソリと言った俺にアイザックが控えめに顔を顰める。 「あんたが事故に遭ったのは俺の所為なんだよ!」 「え、いや、そんな訳ないだろう?君は誰なんだ?俺の患者さん?」 「ふざけんなよ!俺は、あんたが飼ってた猫だよ!」 俺はジャケットのポケットを探り、デカイ猫のぬいぐるみごと鍵を引っ張り出してアイザックの眼前に突き付けた。 「……俺の飼ってた猫は一年前に死んだ……けど、そのキーホルダーは確かにその猫が死んだ時に俺が買ったもの……に似ている。まさか、君は俺の猫の生まれ変わりなのか?」 そんなに前に買った物だとは知らなかったが、このキーホルダーを持っていて良かった。
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