八七六〇時間の忘却

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あんたが言っていることは、まったく理解出来ない。 変なことを言っているのは分かる。 だが、そんな姿になんとなく、ホッとしてしまった。 あんたも俺も馬鹿野郎だ、本当に。 馬鹿野郎で卑怯者だ。 「……もう、なんだって良いから……、頼むから……っ、忘れないでくれ……」 それに弱虫で泣き虫だ。 「ど、どうした?泣くなよ」 困った顔で、本当に困った顔で、アイザックが俺の顔を覗き込んできた。 こんな得体の知れない人間、いや、猫なんて見捨ててしまえば良いのに。 記憶を失くしたって、あんたはお人好しだよ。 生き物は何故、弱く造られているのだろうか。 命の儚さがどうのとか、その方が面白いとか、そんな理由だろうか? すぐに壊れ、必死に修復を試みて失敗する様を見るのが、そんなに愉しいか? 神なんて居ないくせに。 助けてなんざくれないくせに────。
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