三時間の迷走

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サイトにはカウンセリングルームの責任者の写真が載っていた。 それは紛れもなく、アイザックだった。 心理カウンセラーだと? ふざけるな。 偶々俺に間違って電話を掛けて来たのが心理カウンセラーだとして、俺の病が治る訳ではない。 何人(なんびと)も深い深い闇の底に沈み切った俺を引き上げることなど不可能なのだ。 「はぁ……、嘘だろう?」 奴に出会ってから三時間。 パンケーキを食い終わり、トレーごと皿が片付けられてから気が付いた。 わざとなのか、それとも、全くの不本意なのか。 テーブルの端に薔薇のボールペンが置き去りにされていたのだ。 何故、今まで気付かなかったのか。 ────奴に気を逸らされていたから……? ズルいよな、本当に。 俺に、これを届けに来いってことだろう? よく、そんなに人のことを信用出来たもんだ。 人間なんざ信用するもんじゃない。 俺は、わざわざ忘れ物を届けに行くほど善い人間じゃない。 届けに行かないからな? 絶対に────。
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