八七六〇時間の忘却

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それでも言葉を口にしてしまったのは、俺の心が歪んでいる所為だと思う。 また、試しているのだ、今度は自分を。 アイザックの問いに答えられるか、どうか。 ほら、奴が口を開くぞ? どんな問いが来ようとも、お前は答えなければならない。 そんな悪魔の囁きが耳元で聞こえそうになった時、アイザックが言った。 「なら、また一緒に住んでくれるか?」 「……は?なんだって?」 思わず、俺は千切ったパンケーキにフォークを突き刺さして、聞き返してしまった。 「また、一緒に住んでくれないか?」 正直言って、その言葉に嬉しいという感情を抱いてしまった。 だが、よく考えろ。 記憶が一年分欠けているとはいえ、いつからしていたのか知らないが、アイザックは俺をストーカーしていた人間だ。 監視していた人間だ。 「悩むのは分かる。でも、君と暮らせば、俺は何かを思い出せる気がするんだよ」 俺を利用するってことか? 「俺が、思い出して欲しくないって言ったら、どうする?」 あんたの記憶の中に俺は存在しない。 忘れたまま……、忘れられたまま、そばに居るのはツラい。
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