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コーヒーの香ばしい匂いがする。
次の日のことだ。
俺はいつもと変わらず、仕事に来ていた。
ズル休みをした俺だったが、怒られはしたが仕事をクビにはならなかったのだ。
「良樹、今日機嫌良いな。何か良いことでもあったのか?」
午後六時、仕事終わりに爺さんから言われた。
爺さんと婆さんは、俺のことを自分たちの息子のように下の名前で呼ぶが、まだ慣れない。
「そうですか?」
「お前がニヤけてるところなんて初めて見たぞ?」
爺さんの怪訝そうな顔は、いつも見ているが、苦笑いのようなものを見たのは初めてだ。
冗談じゃないということが分かった。
「……お、お疲れ様でした!」
なんと返事をすれば良いのか分からず、俺は逃げ出すように店を出た。
まさか、自分がニヤけていたとは、思いも寄らなかった。
一体、何を無意識に考えていたのか。
人の心配をしたり、誰かのことを考えたり、俺もやけに人間らしくなってしまったものだと思う。
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