一時間の真相

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俺の頭の中にはアイザックが居る。 不安だと言っていただろう? 心配なのだ、奴が一人の時、何を考えているのか。 ある日突然、自分の中から記憶がすべてではなく、一部だけ失われる。 その感覚は、一体、どんなものなのだろうか? すべて忘れてしまえたらと思うのだろうか? アイザックが記憶を取り戻したいと思うことは、当然のことなのかもしれない。 道端で見知らぬ人間に名前を呼ばれる恐怖だとか、大切な何かを知らないうちに忘れてしまっていた衝撃だとか、精神的に良くない状況だと思う。 自分に置き換えれば、そんなことは直ぐに分かることだ。 それでも、俺の中で気持ちが戦うのは、アイザックに自分のことを思い出して欲しいと願いながら、心のどこかで思い出して欲しくないと思っているからだ。 何故、思い出さなかった? 俺が昨日あんたの家に戻った時、玄関は綺麗になっていた。 キャンドルの破片を片付けたのは、あんただろう? どうして、思い出してくれなかったんだ? ツラい仕事をしていた時から苦しい思いはしてきたが、なんでだろうな、あんたと出会ってからの方が苦しいよ。 教えてくれよ、アイザックさん。
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