465人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の頭の中にはアイザックが居る。
不安だと言っていただろう?
心配なのだ、奴が一人の時、何を考えているのか。
ある日突然、自分の中から記憶がすべてではなく、一部だけ失われる。
その感覚は、一体、どんなものなのだろうか?
すべて忘れてしまえたらと思うのだろうか?
アイザックが記憶を取り戻したいと思うことは、当然のことなのかもしれない。
道端で見知らぬ人間に名前を呼ばれる恐怖だとか、大切な何かを知らないうちに忘れてしまっていた衝撃だとか、精神的に良くない状況だと思う。
自分に置き換えれば、そんなことは直ぐに分かることだ。
それでも、俺の中で気持ちが戦うのは、アイザックに自分のことを思い出して欲しいと願いながら、心のどこかで思い出して欲しくないと思っているからだ。
何故、思い出さなかった?
俺が昨日あんたの家に戻った時、玄関は綺麗になっていた。
キャンドルの破片を片付けたのは、あんただろう?
どうして、思い出してくれなかったんだ?
ツラい仕事をしていた時から苦しい思いはしてきたが、なんでだろうな、あんたと出会ってからの方が苦しいよ。
教えてくれよ、アイザックさん。
最初のコメントを投稿しよう!