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何故、分かったのだろうか。
「ただいま」
俺が玄関の扉を開けると、そこにはアイザックが立っていた。
「おかえり」
記憶を失くす前は一度だって、こうやって俺を迎えることなど無かったくせに。
俺が帰って来たことにすら気付かなかったくせに。
────ああ、なんでだろうな、堪らなく、抱き締めたい……。
靴を脱ぐことなく、俺はアイザックの身体にそっと両腕をまわした。
「ニャン太?」
分かるよ、その気持ち。
俺も今のあんたと同じ気持ちだった。
「ただの挨拶だよ」
そう言って、俺は戸惑うアイザックから離れた。
あんたが言ったんだ、『なにって、ハグだろ?ただの挨拶だから、これ』と。
嘘だったんだろう?
今の俺と同じ気持ちだったんだろう?
堪らなく、触れたくなってしまったんだ。
記憶から消されてから気付くなんて、遅いよな。
ずっと、好きだったんだよ。
俺はあんたが好きなんだ。
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