四七時間の慰安

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僅かに残った人の善意につけこむなんざ、卑怯だ。 「こんにちは、ご予約ですか?」 自動ドアをくぐるや否や、オレンジ色を基調とした柔らかい雰囲気のある受付で、若い綺麗な女性に声を掛けられた。 「へ?い、いや、予約とかじゃなくて……、アイザックさん居らっしゃいますか?じゃなくて、これ渡しておいてください」 「ノア先生ですか?今、お呼びしますね」 俺が少々挙動不審だった所為だろうか、受付の女性は困ったような顔をして内線を掛けようとしている。 別に、あの人と顔を合わせる必要は無いんだよ。 「いや、違う。だから、これを……」 「あ、ノア先生!お客様ですよ!」 運が良いのか、悪いのか。 薔薇のボールペンを受付に置いた瞬間、ちょうど奥の扉から、先ほどの格好に白衣を羽織ったアイザックが姿を現した。 「あんた、これ忘れて────」 「おいおい、ギリギリだな。行くぞ?」 「は?なっ、おい!」 薔薇のボールペンを掴むことなく、アイザックは俺の腕を掴み、スタスタと自動ドアの方に歩みを進めて行く。 別に「律儀だな」とか褒められたかった訳では無いが、他に言葉は無かったのか。 礼を言うとか、だな……。 「じゃあ、美樹ちゃん。あと、よろしくなー」 「はい、ノア先生」 自動ドアが俺の背後で閉まる瞬間のやり取りだ。 俺の滞在時間、実に五分。 何が起こっているのか、全く理解出来ない。
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