三時間の迷走

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春の風が吹いている。 午後二時、俺は男に言われた通り、縦縞駅までやってきた。 ここまで来るのに、かれこれ三十分。 歩きながら見知らぬ男の姿を想像し、予想していたが、少々困ったことになった。 最初から改札は一つしかなく、人も少ないから、そこは問題ないんだが、なんと駅前には外人が二人居たのだ。 二人ともアラブ人らしく、しかも、仲良く談笑している。 近付いてみると、俺が全く理解出来ない言語を話していた。 俺は、電話の男に騙されたのだろうか? これは話し掛けて良いものなのか? どっちが、あの男だ? 「おい、あんたら、どっちだ?」 俺は、もう死んでも構わないと思っている人間だ。 後先など考えもしない。 何の躊躇いもなく、アラブ人二人に俺は突っかかって行った。 しかし、俺をからかっているのか、二人で意味の分からない言語を話し続ける。 「どっちだ、って聞いてんだよ?」 「こらこら、お前が探してんのは俺だよ」 痺れを切らした俺が、アラブ人の一人に手を伸ばそうとした瞬間、後ろから何者かに首根っこを掴まれた。 ────この声……。 「あ、すみません」なんて付け足して、俺の後ろで見知らぬ男が、アラブ人に謝っている。 そして、数秒後には怪訝そうな顔をしてアラブ人二人は去って行き、俺と男だけが駅前に取り残された。
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