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第5話
「……いいんじゃね?クラスメイトに変わりないんだし。一々文句つけてもつまんないじゃん」
何も言えないでいる阪本を捕まえ、人好きする笑いをする茶髪の少年。
「美人見て照れてんなよ、優翔(ゆうと)!」
彼はムードメーカーなのだろうか。皆が不満顔をしながら、散っていく。
「べ、別に照れてなんか……。金彌(かなや)苦しい!」
じゃれている姿が微笑ましかった。
「こいつ、阪本優翔(さかもと ゆうと)。俺は、眞鍋金彌(まなべ かなや)な。宜しく!『心結ちゃん』!」
予想していなかったので、戸惑う。聞きにくかった彼の名前を知ることが出来た嬉しさから、思わず笑みが零れる。
「お?やっぱ可愛いなー♪」
無邪気に笑う金彌。困った顔をする優翔。
「……宜しくね。それと、ありがとう」
触れてはならない優しさ。でも、温かい。去り行く自分が感じてしまったら、死ぬのが怖くなる。未練なんて感じたくない。なのに、この温もりに微睡みたくなる。……辛くなるだけなのに。
「……心結ちゃん?いきなりどうした?俺がネチネチしてるのが嫌いなだけだよ!しんみりすんな」
くしゃっと頭を撫でられる。心結は自分だけが不幸だと思いたかった。幸せを感じてはならないのだと。流されて幸せを感じた。それだけを胸にと考えていた。『友達』なんていらないなんて嘘だ。自分を忘れないでほしい。でも、多くを残しては残酷過ぎるから。……そう考えていたら、涙が溢れた。
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