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「ちょ!心結ちゃん?!」
「ご、ごめんなさい!何でもないの!」
心結は駆け出した。優しさが嬉しくて、苦しくて。涙が止まらない。一人でいようとしたのに……。前も見ずに走っていた。生徒たちは慌てて、何事かと避けてくれた。しかし、進行方向にいた教師に真正面からぶつかってしまう。
「おっと!大丈夫か?」
しっかりと抱き止めてくれた。顔をあげるとクールな女教師。
「す、すみません!前方不注意で」
目を擦る。そんな心結の両肩ががしっと掴まれた。
「え?」
「み、心結?!心結なのか?!」
聞き覚えがある声。忘れられない、忘れるはずのない声。
「さ、さとちゃん?……でも」
顔は同じ。でも、あの頃より成長した親友がいた。親友の佐藤柚子
さとう ゆうこ
、その人だ。心結には信じられなかった。信じたくなかった。嫌でも時の流れを感じなくてはならないから。……しかし、今の心結には繋げることは出来ない。
「……やっと、やっと会えた!なんで制服着てるんだ?」
心結はきょとんとする。
「だって、高校生ですもの」
あの頃と寸分変わらない姿で、微笑んでいた。"天使の微笑み"と囁かれた笑顔で。
「……心結?」
違和感を感じた。
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