第6話 優翔View

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第6話 優翔View

━━始業式、それは睡魔が襲うだけの式に他ならない 「始業式くらいいなくても、ガイダンスに間に合えばいいよね」 俺はそう一人呟きながら、行き馴れた秘密の場所へと向かう。図書塔の最上階。そこは俺が入学してから、サボったりするときに利用していたが、今のところは誰も来ていない。まさに穴場だ。普通の高校にはない、蔵書まで扱われている。図書の持ち出しは禁止。貸し出しは行われていない。猫っ毛で色素の薄い髪を風に煽られながら、図書塔に入る。いつもと変わらない静けさ。春休みが終わり、やっと憩いの場所に行ける嬉しさ。だが、一年通ってもこの螺旋階段は馴れない。転ばないように慎重に登っていく。 ……その場所に誰かがいるなんて思わずに。
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