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「母さん、そろそろ行くぞ」
「あら、もうそんな時間?
じゃあ、帰りましょ」
「……また、泣いてたのか?」
「そうよ。
最近流行りの、涙活って言うの?
目は痛いんだけど、スッキリするのよね」
「まぁ、本人がイイなら、イイけどな」
「でも目が、腫れぼったくなるかしらね」
「大丈夫。
そんぐらいじゃ、
そのカワイさは揺らがねぇよ」
「……あら」
「……って、親父なら言うだろ」
囁いて歩き出した息子の背中が、
やけに逞しく見えた。
━━生意気に、俺の心を読みやがって。
コイツもまた、出逢ったらしい。
俺達のように。
傍に居るだけで、幸せになれる相手と。
「ふふ……仁さん、行きましょ」
飛び行く花びらを追いかけるように。
柊香が穏やかに微笑んで、
樹の下を離れた。
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