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「ここはもう、ピークは過ぎちゃったわね」
柊香が見上げる先には、
日本の川辺には大抵植わっている、
あの薄桃色の花々が、
風に舞い飛ぶ光景が広がっていた。
「でも……綺麗」
そうやって微笑む柊香こそ、
本当に美しいのに、
自分をササッと棚に上げて、
桜の優美さを称えるのだ。
━━お前も、綺麗だよ。
そう言ったら、喜んでくれるだろうか。
いや、多分。
『ふふ。カワイイ、じゃないの?』
なんて言って、きっと茶化すんだろう。
━━カワイイカワイイ、俺の柊香。
それは、息子たちですら、
『耳タコだよ?』とぼやいてくる、
俺の口癖である。
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