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風に舞い散る花びらの影から、
見え隠れする陽光が、どれだけ美しくとも。
煌めく水面の薄桃色に染まり行く様が、
如何に華やかであったとしても。
俺にとっては何時も、妻を超えるものはない。
「うわぁ……綺麗ね」
━━ぶわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
柊香の肩にかかる髪が、前に流れて。
朗らかな横顔を隠すほどの、風が吹いた。
枝を離れた花びらが、縦横無尽に舞って。
その場を空気ごと、薄桃色に染め上げた。
「散るって言うより、飛んでるみたいね」
あぁ。確かに、そうだ。
それは、ただただ地面を目指すのではない。
風の誘うままに、
あちらこちらへ翔んでゆく。
まるで、意志でもあるかのように。
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