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「あら?こんな霧の深い日に、外に人がいるなんて珍しい。あなた、この町の人じゃないわね?ここで何していらっしゃるの?」
「…あ、いや、それが『妖館(アヤカシヤカタ)』と言う所の求人広告を頼りに、ここまでやってきたのですが、待てども待てどもバスは来ず、途方に暮れておったのです」
「あら、そうですの。バスは霧のせいで遅れているのでしょう。この町では、よくあることよ。それで『妖館』の求人を見てこちらへ?」
「ええ。『妖館』をご存知なんですか?」
「もちろんですわ。私も、あそこで働いていますから。今から、ちょうど帰るところでしたの。」
「え!?そうなのですか?いやぁ、それは奇遇だなー!」
「私が案内して差し上げますわ。ご一緒します?」
「はい。もちろんであります!お願いします!」
「あら、ちょうどバスも来たようね」
霧の中から、バスの明かりが近づいてくる。バスに乗り込みながら、
いやぁ、これはそれにしてもツイてるなぁ。
さっきまでの鬱々とした気分が嘘のように一気に晴れ渡ったようであるなぁ。
住み込み可で、まかない付き、しかも、こんな美人と働けるなんて、まるで夢のようであるなぁ。と、俺は思いついニヤニヤしていると。
「どうなさったの?さっきからずっとニコニコしていらっしゃって」
「いやぁ、まぁ、バスが来てホッとしたなぁなんて、ははは」
走るバス。霧で外は何も見えない。
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