第1章

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彼らは核シェルター内の人達にこう告げた。 「お前たちは、助けを求めた我々の先祖を見捨てた。 核シェルターに収容されなくても良いから、必要な物資の援助を頼んだ先祖の願いも無視した。 お前たちはその中に閉じこもり、見捨てられた先祖と交流する事を拒んだ。 だから我々は、お前たちがそこから出てくる事を拒否する。 お前たちがそこから無理矢理出てこようとしたら、攻撃する。 お前たちは我々と違い、この放射能や細菌で満ちた世界の外気に触れれば即死する。 お前たちが立てこもるその場所と、外界を隔てている壁を壊すのは簡単だ。 死にたくなければ出てくるな。 とは言っても、お前たちが必要としている物資は、可能な限り融通してやろう。 その事を拒否したら、我々もお前たちの先祖と同類になってしまうからな」 その通告がなされた時から、核シェルターは牢獄になった。 私が展望室から見た、桜を始めとする花々や鳥などの生物は皆、外界に見捨てられた者達と同じく、外界の世界に順応する事が出来た生物の子孫。 私達がその花々を始めとする生物に直接触れる事は、夢の中でしかできない。 一定の年齢に達するまで理由が教えられないのは、それらが理由だった。 自分達が生きている空間が核シェルターでは無く、牢獄と知った時、絶望し命を絶つ者が続出する。 それを少しでも遅らせる為、教える年齢は成人してからと決められていた。 後1万年も時が過ぎれば牢獄の中に生きる者はいなくなり、外界の者達によって、核シェルターはモニュメントになるのだろう。
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