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今まで決して母には買って貰えなかった市販の菓子。大人になった今となっては、自由に買えるが、あの時に買うからこそ意味があったのだと思う。
マユカさんに似た、その女の子のプラスチック人形を、机の隅に座らせてぼんやりと眺め、僕は彼女との思い出を辿っていた。
あれから数年が経ち、桜の花もつぼみを膨らませた頃には、僕の部屋にはマユカさんが居た。あれは本当のシークレットだった。チョコエッグから生まれた彼女は僕だけのマユカさんになった。いわゆる刷り込みってやつかもしれない。マユカさんは、僕にしか興味を示さないし、一日僕の帰りをずっと部屋で待っている。母も、疑問一つ持たずに、ずっと彼女の世話をしてくれている。僕は、幸せだ。
僕はいつものように、母とマユカさんに見送られて、研究所へと向かう。
あいかわらず、実験の結果を聞かれる毎日に、僕は渋い返事を返す。そう簡単には行きませんよと。
僕は、遺伝子編集技術の研究に携わっている。主な目的は世界から病気を失くすことだが、考え方によれば、野菜の遺伝子組み換えはすでに周知であり、それを人間に応用することもできる。すなわち、デザインされた人間を作り出すこともできるということだ。
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