第一章 白い霧の中

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「これは、あなたの心の中にある玉でした。以前私があなたの中からこの玉を取り出して、預かっていたものなのです。やっと時が来てあなたに返す時が来ました。この玉は長年私の中にいて清められています。きっとあなたのお役に立つ事でしょう」と言う。 白蛇を見つめながらふと昔の記憶を手繰り寄せながら、この白蛇との出会いがあったのかどうか回想してみることにしたが、全く覚えがないのである。 私の考えていることが分かっているかのように、白蛇は、私にむかって、 「あなたは私との記憶がないと思っていらっしゃるのではないですか、ただ単にあなたが忘れているだけなのですよ。心の奥底にしまっているだけなんですよ。さあこの玉を持って行きなさい。そうすれば、あなたがこれからやらなくては、ならないことが見えてくるでしょう。さあおゆきなさい。その玉があなたに道を示してくれるでしょう。その玉さえあれば大丈夫です。ではこれにて失礼いたします」と、言うと白蛇はわたしの前から消えてしまったのである。 なんとも不思議なことがあるものだとおもっていると、確かに私の手のひらの上に丸い玉が乗っていた。 (本当だったんだ。しかし、この玉は私をどう導いてくれるのだろう。何をさせたいと言うのだろうか) その日から、勇馬の町には、白い霧が立ち込めて、晴れることはなかった。 だが、その霧は勇馬の町以外でも、どんどん広がっりを見せていた。この世界を霧で覆い始めていた。     
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